教育を再考する - オンライン教育から何を学ぶのか

20/05/20223 minute read
教育を再考する - オンライン教育から何を学ぶのか

COVID19の蔓延により、私たちは遠隔学習、Zoom、仮想会議といった用語を知ることになりました。多くのことが未知数の中、オンライン教育・学習が私たちの新しい常識になるということだけははっきりと分かったのです。

これまで、オンライン教育は選択肢の一つではありましたが、真剣に推進している学校はほとんどありませんでした。もちろんオンライン教育の利点については議論はされてきました。例えば、オンライン教育では生徒やスタッフが学ぶ・教える場所を選ぶことができるということがあります。また、自分のスケジュールに合わせて学ぶ事ができるので、利便性の高さや時間を柔軟に調整できるのもオンライン教育の魅力といえるでしょう。ほとんどの生徒が教室に戻り、フルタイムで授業を受けるようになった今でも、私たちは、オンラインで生徒と関わり、学習を最適化する方法を再考し、オンライン教育の可能性を模索し続けています。オンライン教育、そして教育技術の革新は、教師と生徒の新しい相互作用的な学習の機会を提供すると考えられます。

これらのオンライン学習のツールは、さまざまなタイプの学習者とその個性を活かすのに役立ちます。特に内気な生徒や内向的な生徒、注目を浴びたくない生徒にとっては、オンライン・エンゲージメント・ツールは安全な交流の場を提供してくれるという見解もあります。その結果、生徒の学校コミュニティをより広げる効果もあるのです。

さらにオンラインでは授業を録画する機会もあり、その結果、通年で生徒たちに学習リソースを提供することができるようになりました。もう一つの利点は、教育者のテクノロジーに関する習熟度が高まり、教育関係者たちが場所を問わず集まり、情報や最適な教育方法を共有できるようになったことです。例えば、同じ学校の教師同士はもちろん、他の学校の教師とも新しいテクノロジーを使って関わることができるようになりました。

こうした利点は、生徒たちが、生徒自身の性格や背景、使用言語に関係なく、それぞれの強みを生かした最高の教育を受けられることを可能にすると考えられます。

ただこのような素晴らしい新しい機会を活用する一方で、オンライン教育には課題があることも認識しておく必要があります。オンライン教育では対面での学習に比べて、生徒と教師・他の生徒との交流が制限される場合があります。このような制限は、生徒が情報にアクセスして処理する能力に影響を及ぼし、他の生徒との社会的スキル、協調的スキル、批判的思考スキルの習得を妨げ、ウェルビーイングにも影響を及ぼしてしまうかもしれません。

またオンライン学習環境は、対面の学習環境と異なるため、教師は、生徒の学習や思考に伴うボディランゲージなどの手がかりをもとに、必要に応じて方向転換したり、教育的戦略を調整したりすることができるようになる必要があります。これは、生徒が言語を習得途中である場合や、補助的支援が必要な場合に顕著にみられるでしょう。このような課題は、生徒の対面授業への参加機会が減ってしまうことでさらに深刻化していきます。

オンラインでの社会的・情緒的な学習は、対面での交流や関係構築の代わりにはならないということは認識しておく必要があるでしょう。

オンライン教育や学習は、教育界の未来の可能性を広げます。私は、オンライン学習は、若い世代が自分たちが置かれた環境をどのように解釈しているか、ということと密接に関係していると思います。また、対面式とオンライン式とを併用することで、オンラインでの学習がますます効果を発揮すると信じています。


今回の記事は、米国パームビーチ郡にある最大級の高校、ジョン・I・レナード高校の校長、メリッサ・パターソンによるものです。

この記事は、オンライン教育によって生まれるチャンスと課題を探る雑誌「Cambridge Outlook」の最新号に掲載されました。この雑誌へのアクセスはこちらから。

なお、パターション氏が本記事で言及している社会性についてですが、「学校に全てを任せる」というスタンスですと、確かにこの懸念がありますが、教育の枠組みを考え直すだけで、この懸念点を払拭できるでしょう。例えば、Crimson Global Academyでは習熟度別で少人数制、そして質の高い先生が指導する事により、学びが効率的になります。これまで学校で一日6時間ほど授業を受けていた生徒もその時間が3-4時間に半減します。そして通学時間もなくなるので、一日4-5時間、新しい時間が生まれるのです。この時間を使って、アート・音楽・プログラミング等の習い事に通ったり、スポーツチームに所属するのも良いでしょう。質の高い学習環境を保ちつつ、こういった課外活動で本当に生きる社会性を身に着ける事ができるわけです。このように、常に進化する世の中に適応していきながら、最善の学習環境を考え続ける姿勢が我々大人に求められているような気がしています。